今回から、本当の意味での再開です。
お風呂場を見終わった僕たちは、さらに奥のお部屋へ。
そこはね、ロルフさんからメイドさんや執事さんの見習いさんたちがお勉強するとこにするんだよって聞いてたんだ。。
ここ、前来た時は家具もないし、お部屋の装飾とかも無かったんだよね。
だから僕、お勉強するお部屋だったらきっと前の世界の学校ってとこにあった教室みたいなとこになってるんだろうなぁって思ってたんだ。
でも。
「わぁ、すっごく豪華な部屋に変わってるわ」
「流石に二階の客室ほどじゃないけど、私たちじゃ近づくのも躊躇われそうよね」
入った瞬間にニコラさんたちがこんな風に言うくらい、そのお部屋はすっごく豪華になってたんだよね。
でもさ、そのお部屋を見たロルフさんとバーリマンさんがお話してるのを聞いて、僕たちはすっごくびっくりする事になったんだ。
「ふむ。接客をする部屋としては及第点からほど遠いが、外観だけでもそれらしく見えるようにしたようじゃな」
「そうですわね。ここまで整えられているのであれば、メイドや執事の教育にはさほど支障が出るような事は無いでしょう」
僕やニコラさんたちは、覗いたとこがすっごいお部屋になってるってびっくりしたでしょ?
なのにロルフさんは、これじゃあ気に入らないみたいなんだよ。
その上、バーリマンさんまでこれでもお勉強には問題ないくらいにはなってるねなんて言うんだもん
だから僕、びっくりしてバーリマンさんに聞いてみたんだ。
「バーリマンさん。何がダメなの? 僕、何にもなかったとこがすっごいお部屋になってるってすっごくびっくりしたのに」
でもね、僕の言った事を聞いたバーリマンさんは、フフフって笑ってこういったんだよ。
「ただ漠然と見渡しただけでは、もしかするとそう感じてしまうかもしれないわね。でもルディーン君。伯爵の、ロルフさんの別邸に何度か足を運んだことのあるあなたなら、注意深く見れば解るのではないかしら?」
バーリマンさんはそう言うと、僕の頭をなでながらお部屋の中を見たんだ。
「よく見たら解るの?」
だから僕もそれにつられてお部屋の中をよ〜く見たんだけど、
「あっ、ホントだ。ちょっと変!」
そしたら変なとこが何個か見つかったんだよね。
まず床なんだけどね、パット見るときれいな赤っぽいオレンジ色の絨毯が敷いてあるように見えるんだよ。
でもそれは絨毯じゃなくって、ちょっと厚手のオレンジ色の布が敷いてあるだけだったんだ。
それにね、テーブルに白い布がかかってたからすぐには解んなかったけど、よ〜く見てみるとテーブルの足が村にある僕んちで使ってるのみたいなやつなんだよね。
あと、そのテーブルと一緒になってる椅子も、僕たちから見える背もたれのとこに赤い布が貼ってあるだけで、椅子自体はやっぱりこれも僕んちで使ってるような木の椅子だったもんだからびっくりしちゃった。
って事はさ、多分近くで見たらきっと座るとこもクッションなんか敷いてないと思うんだよね。
だったらこのお部屋はバーリマンさんがいう通り、見た目だけを高級なお部屋っぽくしあてるだけって事なんだろうなぁ。
それに気が付いた僕は、パッと見ただけで気が付くロルフさんたちは凄いなぁなんて考えてたんだけど、
「ルディーンくん。どこが変なの? 私には解らないんだけど」
ニコラさんは、よ〜く見ても解んなかったみたい。
それにね、それはユリアナさんやアマリアさんもおんなじみたいで、3人そろって僕のお顔を見ながら頭をこてんって倒してたんだよね。
「なんで解んないの? だって床に敷いてあるのは厚めのだけど布だし机や椅子も普通のだよ」
「ええっ!? こんな広い部屋の床一面に布が敷いてあるなんてすごいじゃない」
「それに椅子やテーブルだって、今まで私たちが泊まっていた宿に比べたらはるかにいいものを使っているもの」
これを聞いた僕は、ちょっとびっくりしたんだよね。
だってさ、今ニコラさんたちが泊まってる『若葉の風亭』は、お部屋の中にちゃんと敷物が敷いてあるもん。
それに広いって言うんだったら、ごみんなでご飯を食べた食堂はここよりも広いんだよ?
「広いって、宿屋さんの食堂にだって敷物がちゃんと敷いてあったじゃないか!」
「えっと……ここはこの間まで何もない部屋だったのに、あの高級宿の食堂と同じようになっていたら、凄いと思うのは当たり前でしょ?」
ニコラさんのお話を聞いて、ユリアナさんたちもうんうんって頷いてるんだよね。
でもさ、あそこに敷いてあったのはちゃんとした敷物だったのに、ここのは厚手だけどただの布でしょ?
だから僕、違うよって言おうとしたんだけど、
「ルディーン君。この子らの今までの生活では、そもそも床に何かを敷いてあるという事自体が無かったのであろう。だからその敷いてあるものの違いなど、横に並べて比べでもせねば解るまいて」
そしたらお爺さん司祭様に、ニコラさんたちは布が敷いてある事自体がすごいと思ってるんだからきっと解んないよって言われちゃった。
「そっか。あっ! でも、テーブルや椅子の違いは分かるでしょ? 宿屋さんで見てるし」
「確かに宿屋さんにあったテーブルや椅子は彫刻がしてあったりして凄く豪華だったけど……」
「ええ。この椅子やテーブルだって、表面がこんなに滑らかになるほど丁寧に仕上げられてるもの」
「こんな高級なイスやテーブル、私からしたら傷を付けたら大変だから怖くて使えないくらいすごい物じゃない」
ニコラさんたちに聞いてびっくりしたんだけど、冒険者さんたちが泊まってる宿屋さんで使ってる椅子って、座るとこしかつるつるにしてないんだって。
それにね、テーブルだって木の板を並べて作ってあるだけだから、たまに板の暑さが違って少し段差があるのまであるんだよって教えてくれたんだ。
「こんな一枚板の、それも表面を磨き上げてあるテーブルなんて、今泊めてもらってる『若葉の風亭』に行くまで見た事も無かったわよ」
「それにこの椅子だって、背もたれがある上に、そこと座るところに布まで貼ってあるのよ?」
あと、冒険者さんたちが行くようなお店だと、椅子に背もたれなんてないんだって。
それどころか、ベンチみたいなとこにみんなで座るところまであるって言うんだもん。
僕、びっくりしちゃったんだ。
「背もたれ、無いんだ……」
「あれ? ルディーン君、冒険者ギルドにいって事あるわよね? あそこにある椅子も、背もたれなんてなかったと思うけど?」
「あれ? 無かったっけ?」
僕、冒険者ギルドで座るのってギルドマスターのお爺さんのお部屋だったり、奥にあるお部屋だったりする事が多いでしょ?
そこの椅子にはみんな背もたれがあったもんだからすっかり忘れてたんだけど、よく思い出してみると前に受付近くのとこで果実水を飲んだとこの椅子は背もたれが無かったような気がする。
「そっかぁ。背もたれが無い椅子のとこもいっぱいあるんだね」
「私たちからすると、村の子供なのにルディーン君が背もたれのある椅子の方が普通だと思っていた事の方がびっくりだよ」
ニコラさんはそう言うとね、村といっても私たちの村とグランリルの村とはそんなに違うんだってしょんぼりしちゃったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
思い出してみると椅子の背もたれって、今でもない居酒屋が結構多いですよね。
というか、ルディーン君が驚いていたベンチタイプの店も結構多いような?
そうか、グランリルの村って今の常識から考えてもかなり上級な暮らしをしているんだなぁ。